2009年→2010年、マレーシア、クアラルンプール。

今回のインド旅行でマレーシア航空を利用した最大の理由はここにある。深夜にデリーを発つと、早朝にはクアラルンプールにいる。ここクアラルンプールから関空へ飛ぶ便はその日の深夜。丸一日、常夏のこの街で過ごせるのだ。燃える太陽、突き抜ける青空、白い雲。陰鬱なデリーが嘘のよう。そして、旨い食事と、冷えたビール。もう、これ以上必要なものはなにもない。

クアラルンプールは開発が急ピッチで進められ、東南アジアでも最も先進的な都市の一つとなっている。空港からはノンストップの高速トレインで街の中心部まで約30分。チャイナタウンで見つけた安宿を取り、荷物を置いて、まずは、クアラルンプールの最古のモスク、マスジッド・ジャメへ向かう。高層ビルの間にひっそりと佇む。存在感には欠けるが、熱帯のモスク独特の涼しげな造りで、これはこれで趣深い。

だが、旧市街はどんどん取り壊され、味気ない高層ビルに変わっている。イギリス占領時代に遡るだろうヨーロッパ風の建物とか、街のあちらこちらに残ってはいるが、いつ無くなってもおかしくないような状態。チャイナタウンは存在はしているものの、お洒落なアーケード街になっていたりして、どうにも落ち着かない。

それでも、食文化は永遠だ。昼飯はチャイナタウンで海南風中華料理をつまみながら、待望の冷えたビールを。不味い不味いインドの飯にぐったりした我々は、この料理を目の前にして、ただただ感動の涙を流す。

昼食後、奇鳥・怪鳥が放し飼いにされるバードパークへ。ヒトの残飯を食い漁る巨大な鳥を眺めながら、大自然の逞しさと人間の存在の小ささを思い知る。

楽しい日はあっという間に過ぎるもの。日が傾くと、チャイナタウンの路上には屋台が並ぶ。空芯菜や鹿肉など、日本ではあまり食せないものを適度につまみながら、またビールを飲んでいたら、あっと言う間に時間切れとなる。

そして、クアラルンプール深夜発の便で極寒の日本へと飛び立ち、またいつもの忙殺の日々が始まったのであった。日本国内を出張で飛び回り、地獄の年度末を生き延びた私は、5月のゴールデンウィークにイランへ飛び立った。続きは、そのうち。