今回の旅のシンガポール航空をチェンナイin / コチoutにしておけばよかったのだが、旅程をあまり考慮に入れておらず、なんとなくチェンナイin / outで購入してしまった。仕方なく朝のフォート・コチを出て、チェンナイまでJet Airwaysで飛ぶことに。その結果、最後の1泊はチェンナイ近郊で過ごすことになったので、最後の最後のお楽しみとして残しておいたのがマハーバリプラム(ママラプラム)という街である。チェンナイのバスターミナルから満員のローカルバスに揺られ約2時間。日が傾きつつある頃、ようやくマハーバリプラムに着いた。
チェンナイは普通の大都会で、あまり興味は持てなかった。それは自分だけではないようで、旅行者のほとんどはマハーバリプラムに向かう。ここは、世界遺産の寺院と、ちょっとしたビーチのある小さな街で、バックパッカー向けの安宿や店が充実している。世界遺産である海岸寺院は実際たいしたことはなさそうだった(だから、遠くから眺めただけだった。)が、街の居心地が素晴らしくよい。この居心地のよさを無理矢理例えるなら、カトマンズを相当小ぢんまりさせたような感じか。日が沈んだ後、恒例となっているらしいダンスフェスティバルを適当に眺めたりしながら、ふらふらと街を歩き、カフェで冷えたフルーツジュースを飲みながら、深夜まで小説を読み耽った。
翌日は、いちおう遺跡でも回ってみる。落ちそうで落ちない巨大な岩「バターボール」が有名。まあ、通過儀礼的なそんなものよりも、ここは街歩きが楽しい。バックパッカー向けの店が並ぶOthavadai Streetからひとつ裏路地に入ってみれば、穏やかな住宅街になる。南国らしいカラフルな彩りの家が並び、抜けるような青空にその壁の色がよく映える。
結局、夕方までフラフラと街を歩き、タクシーで空港に向かった。南インドをぐるりと回ったこの旅。派手な土地ではないので、帰国してから友人に感想を求められても、「ああ、のんびりしてたよ」としか答えられないのだけれど、本当にいい旅って、そういうものだとしみじみ思う。それは、カメラの中に蓄積された笑顔の数が断トツで多いことでもわかる。